第9回:【住宅業界】古くからある地元工務店の現状【ZEH (ネット・ゼロ・エネルギーハウス)・フランチャイズ化・M&A・トヨタホームズ・職人不足問題】

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古くからある地元工務店の現状【弱点は新技術の開発】

会社の規模により、住宅メーカーと工務店は区分けをされています。規模が小さくても、IT技術の進化により工務店も情報を発信できる時代です。工務店は生き残りをかけてさまざまな努力をしています。

淘汰されていく地元工務店

地元工務店と住宅メーカーの間には、明確な違いはありませんが、基本的に会社の規模で区分けされています。規模が小さい工務店は、地元の顧客に密着して地域に根付いていくことを戦略の基本としています。

地元の工務店は、ほかの業界でいえば商店街などの個人事業主や零細企業、中小企業と同じ位置付けになります。リーマンショック後の不景気などでは、資本力が少ない工務店から経営破綻が続きました。

また、たとえば近年では国がZEH (ネット・ゼロ・エネルギーハウス)という省エネ能力の高い住宅の普及を目指し、補助金を充実させていますが、工務店は開発力の弱さからどうしても不利な状況に陥ってしまいます。

おそらくコロナ禍の影響により地元工務店はますます厳しい状況になるでしょう。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)

断熱・省エネ・創エネに取り組み、年間のエネルギー収支をゼロにすることを目的とした住宅。経済産業省・国土交通省・環境省が連携して普及を推進しており、補助金制度も設けられている。

生き残り

これまで、規模の小さい工務店は地道にチラシを配布して営業活動するしかなかったが、インターネットやSNSが普及したことで、規模の小さい工務店でもITの活用による活路が見い出された。

生き残りをかけた工務店の戦い

工務店は生き残りをかけてさまざまな努力をしています。たとえば職人を自社で抱えている工務店は、規模の大きい住宅メーカーやリフォーム会社から工事を受注することもあります。

工務店のメリットは金額が安いだけでなく、間取りの自由度が高い点などが挙げられます。

また、営業・現場監督(または職人)が同じ場合が多くキメ細かい要望に応えられる点、フットワークが軽い点など、も挙げられます。それらを活かしつつしっかりと差別化を図っている地元工務店は生き残り成長を続けています。

住宅メーカーと地方工務店の違い

住宅メーカーと地方工務店の違い

住宅メーカーと地方工務店の違い

建設業許可業者数の推移

建設業許可業者数の推移

建設業許可業者数の推移

フランチャイズ化とM&Aが進む背景を知る【売上規模は大きく、利益率は低い】

新しい構造や商品を開発する資本がない状況で強みを見つけ、利益を出している工務店。大きな変革を求められているいま、住宅業界では、フランチャイズ化やM&A、共同出資が目立つようになってきました。

住宅メーカーのフランチャイズ化

ここ数年で、大手住宅メーカーのフランチャイズ化やM&Aの急激な加速化が進んでいます。それだけ住宅業界全体が非常に厳しい状況に追い込まれているといえます。

とくに発展途上の新興住宅メーカーはフランチャイズ化を進めています。この原因は住宅メーカーの利益率に起因します。住宅メーカーは売上規模が大きいものの、利益率はおおよそ5~10%前後です。新しい地域に出店していきたいものの、そのためには多大な市場開拓費用がかかり、利益を圧迫してしまうおそれがあります。また、新しい地域にはしっかりと地域に根付いた工務店があるのも原因の1つといえます。

逆に工務店は、新しい構造や商品を開発する資本がない中でジリ貧で戦っています。優秀な人材(営業・職人など)の能力を活かせない状況になっているのです。しかし、フランチャイズに加盟すれば、その住宅メーカーのブランドや商品を利用することができ、優秀な人材を活かすことができます。

フランチャイズ化

本部・親会社と契約を結んだ加盟店・子会社が、ブランド使用料を納めるかわりに、商品の販売権や商標などを取得できるシステム。

M&A

合併と買収という意味である Mergers and Acquisitionsの頭文字を取った言葉。国内企業同士のみならず海外企業の買収事例も多い。

大手住宅メーカーのM&Aや資本提携

たとえば、2016年にトヨタホームズがミサワホームを子会社化、2020年にはヤマダホールディングスがヒノキヤグループを子会社化しています。一部上場の大手住宅メーカーによるM&Aが目立ってきています。

この動きは少子化や職人不足問題、そこにコロナの影響も加わり加速しました。住宅業界は人・物・金、そして技術を活かして、この大きな問題に対抗するための基盤作りをしているのです。

トヨタホームズ

2020年1月にトヨタホームズとパナソニックホームズが、住宅業界の新たな成長機会の発見を狙い、共同出資会社「プライムライフテクノロジーズ」を設立した。

職人不足問題

3Kに加え、福利厚生の不十分さ、時代変化による「職人離れ」なども要因として挙げられる。

フランチャイズ化の戦略と住宅メーカー

フランチャイズ化の戦略と住宅メーカー

フランチャイズ化の戦略と住宅メーカー

近年のハウスメーカーによるM&Aや資本提携

近年のハウスメーカーによるM&Aや資本提携

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