<<第5回:【住宅業界】バリアフリー化や介護対策にビジネスチャンスがある・地震対策に力を入れる住宅メーカー
住宅業界の構造を把握する【住居を作る】
住宅業界は住宅に関することに特化した業界です。業界内で現場を指揮しているのは住宅メーカーや工務店であることが多く、また現場で作業をするのは大工や職人たちです。
住宅業界の主な企業分類
住宅業界とは戸建てやマンションなどの「住居」を作ることを主軸にした業界のことを指します。リフォームは住宅業界に含めて表現されることもあります。
建物・土地の売買や賃貸の不動産業界、ビル・商業施設などの建設を目的とした建設業界とは分けて考えられています。
主に戸建て注文住宅を建てるのは住宅メーカーや工務店です。ほかの業界と異なり、大手住宅メーカーがシェアを独占していないため、新陳代謝がよいとされています。
建売住宅の建設会社はビルダーといわれ、大手建設会社はパワービルダーと表現されます。マンション建設に関わるのは不動産デベロッパーやゼネコンであり、建設業界に分類されることもあります。また、注文住宅やマンションの設計を専門に扱う設計事務所も住宅業界の1つです。
住宅メーカー
大手の住宅建設会社。業務や営業の範囲が広く、支店や子会社を大規模に展開している。住宅の構造や建築資材を規格化して品質と効率のよさを保っている。
工務店
比較的小規模な住宅建設会社。地域密着型の傾向が強い。自由なプラン作りができ、施主と二人三脚で作るスタイルが特徴。
パワービルダー
住宅や大型ビルの建設や販売だけでなく、土地の売買なども行っているため、住宅業界には分類されず、不動産業界に含まれている。
住宅業界を支える職人や建材・設備メーカー
戸建て・マンションを建設する上で指揮官の役割を果たすのが住宅メーカー・工務店・ビルダー・ゼネコンです。
一方で実際に作業をするのは大エや専門の職人たちです。職人たちは個人経営を行っている場合と、株式・有限会社を運営している場合があります。職人の所属する工務店の規模はまちまちで1~3人から、10名以上まで規模の幅があります。もう1つ住宅業界の要になるのが、建材・設備メーカーです。彼らは住宅メーカーなどの施工会社と密接な関わりを持っています。そして消費者ニーズと職人たちの施工のしやすさ、という両方の意見をくみ取りながら商品開発を進めています。
「住居」に特化した住宅業界
住宅業界の構造を見る
大手8社の住宅メーカーを比較し特徴を知る【鉄骨構造と木造構造に分かれる】
日本には10万社以上の住宅メーカーや工務店が存在するといわれています。ここでは主要な8つの住宅メーカーを比較し、その特徴を理解していきましょう。
鉄骨構造をメインにしている住宅メーカー
住宅メーカーとは財閥など巨大企業に属していて、歴史が長い8社を指す場合や、そのほかの規模・売上が大きい注文住宅会社を含める場合など、その対象はその時々で変わります。主に歴史の長い8社を紹介します。
8社のうち5社は軽量鉄骨や重量鉄骨を構造に使用しています。鉄骨は木造より高額になる傾向にありますが、木造よりも柱の数を少なくし、空間を広くできるメリットがあります。
1社目は、業界最大手ともいえる積水ハウスです。同社は売上・利益ともに右肩上がりと安定した経営状況となっています。1棟当たりの単価は比較的高価ですが、各建材や設備は高額なものが採用されています。また、資本力を活かして省エネ、耐震性など全体的に高性能となっています。
2社目は、積水ハウスと同じ積水化学工業が母体となるセキスイハイム(積水化学工業 住宅カンパニー)です。同社は、積水ハウスと同じ鉄骨構造を採用しています。また、ユニット工法を採用しているため、プレハブ工法よりもさらに工期が短くなります。積水ハウスと比較して、坪単価がやや低く、ターゲット層の差別化を図っています。
3社目は、住宅メーカー、プレハブ工法の先駆者的存在の大和ハウス工業です。建設業においてNO.1の売上実績を誇り、注文住宅以外にも分譲マンションや大型店舗も建設しています。注文住宅の戸建てのみの売上では2~3位となっています。鉄骨から木造住宅、中価格帯~高価格帯と商品ラインナップも多く、幅広い客層をターゲットにしています。
4社目は、へーベルハウスで知られている旭化成ホームズです。主力商品であるへーベルハウスの一番の特徴は、ヘーベルというコンクリートを外壁・屋根などに使用していることです。軽量鉄骨にヘーベルを加え、耐震性や防火性を上げることで、強固な建物を提供しています。連結決算では右肩上がりではあるものの、直近5年間の売上は横ばいの推移が続いています。
5社目は、ミサワホーム、トヨタホームと共に、パナソニックとトヨタ自動車が出資する合弁会社の傘下にあるパナソニックホームズです。特徴はやはりパナソニック製の住宅設備機器を優先的に提案するところです。近年の自然災害の増加やコロナ禍における新生活を見据え、耐震性や空気質等に注力しています。
木造構造をメインにしている住宅メーカー
木造メーカーの中では高価格帯になる3社を紹介します。鉄骨メーカーと比べ、グレードの高い内装でデザイン面の充実を図る傾向にあります。
木造1社目は、住友林業です。木造住宅の中では1棟当たりの単価が高くなっています。太い柱を使用したオリジナル工法の木質梁勝ちラーメン構造「ビッグフレーム構法」を採用しているのが特徴的です。木造住宅の売上も毎年上位に位置し、建売やリフォームなどの事業を含めると、大和ハウス工業、積水ハウスに次いで業界第3位になります。2019年までは右肩上がりに売上を伸ばしており、安定した実績となっています。
2社目は、三井グループ傘下の三井ホームです。木造住宅の中で1棟当たりの単価がもっとも高く、かつ鉄骨メーカーと価格を比較しても上位に位置しています。三井ホームはとくに住宅デザインを強みとしており、住宅メーカー8社の中でもラグジュアリ一感が高い特徴があります。三井ホームの業績は横ばいで推移しており、三井不動産の賃貸や分議は年々上昇傾向にあります。
3社目は、グッドデザイン賞を31年連続で受賞するなどデザイン性に定評があるミサワホームです。1階や2階、小屋裏スペースなど好きなフロアに設置できる「蔵」を活用した間取りを武器にするなど、ほかのメーカーとは差別化を狙った戦略を取っています。ここ数年間の業績は横ばいか上向き傾向となっている状況です。
大手住宅メーカー8社の比較
メーカー | 住宅構造 | 特徴 |
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積水ハウス | 鉄骨 |
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セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー) |
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大和ハウス工業 |
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旭化成ホームズ |
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パナソニックホームズ |
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住友林業 | 木造 |
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三井ホーム |
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ミサワホーム |
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住宅メーカーの売上ランキング(2019年度) | |
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1 | 大和ハウス工業(4兆3802億円) |
2 | 積水ハウス(2兆4152億円) |
3 | 飯田グループHD(1兆4020億円) |
4 | 住友林業(1兆1041億円) |
5 | 旭化成ホームズ(6493億円) |
6 | セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)(5129億円) |
7 | ミサワホーム(3993億円) |
8 | パナソニックホームズ(3708億円) |
9 | 三井ホーム(2387億円) |
10 | タマホーム(2092億円) |
11 | トヨタホーム(1643億円) |
12 | サンヨーホームズ(564億円) |
※出所:各社有価証券報告書をもとに作成
>>第7回:【住宅業界】多岐にわたる業界の職種と規模を知る【建築士・宅地建物取引士(宅建)・土地家屋調査士・国家資格と民間資格】