住宅業界の生き残りをかけた商品の開発と戦略【住宅メーカーが新技術で先導】
住宅へのニーズの変化や、住宅そのものの長寿命化のため、住宅メーカーは新商品開発や低価格化に力を入れています。ときにはメーカーと協力してコラボ商品を作ることもあります。
住宅メーカーが行う商品開発
各建材や設備の専門メーカーは商品の製造が本業である以上、もちろん日々新商品の開発を行い、アップデートをくり返しています。対して住宅メーカーや工務店はそれらの各建材や設備を購入して家を作るので、あまり商品開発に携わっていません。しかし、それでは差別化ができなくなってしまいます。
そのため、住宅メーカーは構造部(骨組み)に関しては自社で研究し、安全性の向上や施工の簡略を図っています。また、建材や設備に関しては、たとえば「〇〇の性能を持った〇〇を作って欲しい」とメーカーに依頼し、コラボ開発を行います。場合によっては建材や設備メーカーを傘下に収めることで特定の建材や設備を自社製品にすることもあります。
続々登場する新商品
近年では国の推奨もあり、各メーカーとも高断熱・高気密化に力を入れています。そのため、住宅メーカーも各メーカーとコラボしたり、M&Aしたりすることでオリジナルの断熱材を続々と生み出しています。最近では吹き付けるときに泡のように膨らむ「発泡ウレタン」が人気です。
また、高断熱に合わせて、高性能で低価格な全館空調システムも登場してきました。すべての部屋を年中同じ温度に保ちつつ、電気代の負担は大きくない、ということが実現できるのです。
そのほか、たとえば天井が高い大空間の構造や、水害に強い住宅なども開発されてきています。2020年のコロナの影響もあり、今後は各社、耐ウイルスや、空気清浄機がなくても空気がキレイな住宅にも力を入れているようです。
発泡ウレタン
炭酸ガスなどの発泡剤でウレタン樹脂を発泡させた断熱材のこと。発泡剤にフロンガスが使用されていたが、危険性が指摘され、現在ではより安全性の高い発泡ウレタン断熱材が開発されている。
全館空調システム
住宅全体の空調を一括管理するシステム。建物中にダクトを張り巡らせることで、エアコンや室外機を置くことなく空調バランスを管理できる。
住宅メーカーが行う商品開発は2種類
住宅メーカーの新性能・新商品の一例
建売、注文住宅の間に位置する企画提案型住宅【価格を抑えつつ自由度が高い】
近年住宅メーカーから、建売住宅でもなく注文住宅でもない、「企画提案型住宅(企画住宅)」という新しい商品が登場し、人気が上昇しつつあります。そんな企画提案型住宅の特徴を解説します。
建売・注文住宅のよいところ取り
以前の記事で「建売住宅」「注文住宅」の特徴について説明しました。そして、建売と注文住宅の中心に位置するのが「企画提案型住宅(企画住宅)」です。
企画提案型住宅は「間取りや外観などはある程度決まっているプラン集から選択する住宅商品」のことを指します。同じ建材・設備でたくさんの住宅を作るので、仕入れコストが安くなり注文住宅よりも価格が下がるメリットがあります。
また、注文を受けてからの建設になるため、外観・内装の変更、オプションの変更、一部間取りの変更ができ、建売と比較すると自由度があります。
顧客から見たら、ある程度価格を抑えつつ、設備・色合いなどはある程度選択することができる上、住宅性能は高いレベルになるためメリットは大きいといえます。
仕入れコスト
部材や建築材料を仕入れたり製造したりするときにかかる費用のこと。量産品の採用や原価の低減などがコスト削減につながる。
住宅メーカー側にもメリットの多い
企画提案型住宅は顧客にとってのメリットだけではありません。通常の注文住宅と比較すると、打ち合わせの回数が大幅に減るため人件費分を抑えることができます。そのほか、設計士やコーディネーターなどへの外注費なども下がるため、しっかりと利益を確保することができるのです。
また、間取りや建材などがパターン化されることで工期が短くなります。つまり、営業マンや現場監督の手離れが早く、その分回転数が上がり、売上が上昇するメリットもあるのです。そういった背景から、企画提案型住宅を発売する住宅メーカーが増加しています。
企画提案型住宅とは
企画提案型住宅のメリット
>>第43回:【住宅業界の課題】ITを取り込む住宅メーカー・住宅メーカーの営業マンもIT【SNS・AIシステム・バーチャル展示場】