<<第11回:【住宅業界】ニーズの変化によって業績を上げているリフォーム会社・設計事務所の仕事と工務店との関係【設計事務所・工務店・リフォーム会社】
建売住宅を一気に作るパワービルダー【豊富な資金でコストカット】
住宅業界で、もっとも効率的に利益を追求しているといえるパワービルダー。豊富な資金を活かし、広い土地を低価格で購入し戸建てを数棟~何十棟と建設しています。その戦略と仕組みを見ていきましょう。
パワービルダーとは
明確な基準はありませんが、建売住宅を毎年一定以上の棟数を建築する企業をパワービルダーといいます。
パワービルダーは豊富な資金を活かし、広い土地を低価格で購入しています。そして分譲し「建売住宅」「土地のみ」「建築条件付き」の3種類で販売をするのです。
分譲した土地は人気がある土地から売れていきますが、決して売れ残る土地がないように、販売状況を見ながら柔軟に対応していきます。たとえば余った土地に建売住宅を建てて格安で販売を行ったり、付けていた建築条件を外したりします。パワービルダーは広い土地を一気に購入することでコストカットを実現しているのです。
そのほかにも建材・設備などを大量に仕入れることでコストカットを実現しています。建材・設備メーカーにとってもパワービルダーと取り引きがあるかどうかで売上に大きな差があります。そのため、建材・設備メーカー間で競争が生まれ、低価格な取り引きが可能になります。
パワービルダー
1990年代後半から首都圏において勢力を伸ばしてきた、建売住宅を低価格で建設、販売する住宅業者のこと。
土地のみ
希望の土地だけを購入し、あとから住宅を建てる手法。
建築条件付き
売主が買主に対して、一定の条件を指定して売る土地のこと。「一定期間内に、指定した建設業者で家を建てる」といった条件が付けられる。
工期短縮と工事費を抑えるしくみ
パワービルダーは工事においてもむだを省いています。似たような間取り・設備・建材を用いて建設しています。注文住宅のような細かい段取りや打ち合わせを省くことができるため、工期が短縮されます。また似たような施工をくり返すことで、作業を効率よく行うことができます。工期が短くなれば必然と工事費を抑えることができ、低価格の販売でも利益をしっかりと確保できるようになるのです。
販売状況によって販売条件を柔軟に変更する
パワービルダーの一覧と売上(2019年度)
住宅メーカーの利益構造を把握する【2つの収入源を持つ】
住宅メーカーの収入は家を建てたことによるものと、家を建てた際の紹介事業によって得るものがあります。市場が縮小傾向にある中、これら2つの収入をどちらも伸ばすことが重要になるのです。
粗利益は売上の25~35%
住宅メーカーの利益は大きく分けると「粗利益」と「紹介料」の2つに分類できます。これらの利益から会社のさまざまな費用を差し引くと純利益となります。
住宅メーカーにおける2つの収入源を解説します。家を建てる場合、さまざまな建材や設備、それから各施工業者に支払う費用、つまり「原価」があります。住宅メーカーはその原価に25~35%前後の利益を上乗せして見積書を作成し、施主に支払ってもらいます。たとえば2000万円の原価がかかる場合には、約2650~3050万円の売上、約650~1050万円の粗利益、となります。バブル前後の粗利益は4割前後でしたが、現在の粗利益はどの住宅メーカーや工務店も25~30%が一般的です。そこから人件費や広告宣伝費、そのほかの固定費を支払うと住宅メーカーの純利益は1~10%程度となります。
粗利益
売上高から売上原価を差し引いた金額。売上総利益ともいう。住宅メーカーや工務店では、一般的に25~30%が粗利益といわれている。
紹介料
住宅メーカーの営業が提携業者に顧客を紹介し、紹介先の業者で工事などを行う場合に、住宅メーカ一に支払われる手数料のこと。
大手住宅メーカーだからできる紹介料
住宅メーカーに限らず、すべての住宅会社にとって粗利益が最大の収入源です。ただし、大手住宅メーカーにはほかにも収入源があります。それが紹介料です。たとえば注文住宅の場合、家を建てる際に必ず必要となる「空調」「カーテン」「外構」「仮住まい・引っ越し」「解体工事」「火災保険」などがあります。これらは住宅メーカーの営業マンが顧客を別の提携業者に紹介することが多いです。もし願客がその紹介先の業者で工事などを行えば住宅メーカーに紹介料が支払われることになります。粗利益ほどの収益にはなりませんが、これは規模の大きな住宅メーカーだからこそ発生する収入源です。