第44回:【住宅業界の規則・法律・税制】政府の住宅局関係予算と厳守すべき建築基準法【住宅補助金制度・住宅局関係予算・セーフティネット・空き家問題対策・中古市場の育成・建築基準法・単体規定・集団規定・耐震基準・用途基準・採光義務・接道義務・防火地域・準防火地域・建築確認・中間検査・完了検査】

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経済波及効果を重視した政府の方針【住宅局関係予算の増加】

政府はどのようなことに重点を置き、住宅関連の予算を組んでいるのでしょうか。政府の動きは住宅業界全体に大きな影響を与えるため、動向を知り、住宅補助金制度など政策の把握が重要になるのです。

2021年度の住宅局関係予算における政府方針

直近の2021年度、住宅局関係予算については、次の分野に力を入れると国土交通省の住宅局は発表しています。

①住まい・くらしの安全確保、②くらしの多様化に応える良質な住宅ストックと流通市場の形成、③誰もが安心して暮らせる住まいの確保、④住宅・建築分野の生産性向上と新技術実装の推進の4つです。この4つの項目に対し、さらに細かく事業計画があり、それぞれの事業に国費をどれくらい使うのか、という予算が決まります。そして予算に応じて各事業の補助金などが決定していくのです。

住宅局関係予算

国土交通省の住宅局が毎年発表している、住宅政策に関する予算案。年々増額しており、2021年時点で約3兆円の事業予算が計上されている。

ここ数年間における住宅局関係予算の政府方針

ここ数年間、政府方針に大きな変化はありません。政府方針として真っ先に挙げられるのは「安全・安心」です。

近年のたび重なる災害の発生により、強固な住宅の普及のための費用や、実際の復旧・復興のための費用が毎年のように予算に計上されています。また、高齢者が住みやすく、健康を維持できる、子育てしやすいなどのセーフティネットの強化にかかる費用も計上されています。

次に重点を置かれているのは「空き家問題対策」や「中古市場の育成」です。毎年このキーワードに関連する方針が入っていることから、今後の住宅市場を活性化させていく上で重要なポイントだということがわかります。

住宅・建設業界の経済的効果の大きさを考えると、今後も政府は大きな予算を注ぎ込んでいくことが考えられます。

災害

自然現象や事故などにより人命に影響を及ぼす事態。国内では地震や台風、豪雨などの大規模自然災害が相次いでおり、復興融資や被害時の免税など多くの住宅支援策が講じられている。

セーフティネット

発生するリスクや損害から保護・救済を行う仕組み。住宅関連では、住宅の確保に配慮が必要な低所得者層を対象に、公営住宅への入居や家賃を支給するなどの経済的支援が行われている。

2021年度の住宅の予算の割合

2021年度の住宅の予算の割合

2021年度の住宅の予算の割合

2021年度の住宅局関係予算概要

方針 内容
住まい・くらしの安全の確保
  • 災害等に強い安全な住まい・くらしの推進
  • 東日本大震災からの復興・再生
  • 大規模自然災害からの復旧・復興
くらしの多様化に応える良質な住宅ストックと流通市場の形成
  • 住宅・建築物における「新たな日常」への対応と省エネ化・長寿命化の推進
  • 既存ストックの有効活用・市場の活性化
  • マンションの管理適正化・再生円滑化
  • 空き家対策の強力な推進
誰もが安心して暮らせる住まいの確保
  • 多様な世帯が安心して暮らすことができる住宅セーフティネット機能の強化
  • 高齢者が自立して生活できる住生活の実現
住宅・建築分野の生産性向上と新技術実装の推進
  • 住宅・建築分野における生産性向上・国際展開
  • 地域の良質な木造住宅・建築物の生産体制の強化等
2021年度の住宅局関係予算概要

2021年度の住宅局関係予算概要

国民の生命・健康・財産保護の最低基準を示す建築基準法【建設の際に厳守すべきルール】

戸建て・マンションなどの建築物にはさまざまな法律・ルールが定められています。その1つが建築基準法です。住宅業界に関わる場合は建築基準法が改定されていくたびに、把握していかなければなりません。

暮らしを支える最低基準のルール

建築基準法は、国民の生命・健康・財産が守られ、安全でかつ快適に暮らせるよう、建築物の敷地、構造、設備及び用途に対して最低基準のルールを定めたものです。

建物に関わる法律は、ほかにも都市計画法・消防法・水道法などさまざまなものがあります。建築基準法はこれらの法律と関連して、厳守すべきルールです。

建築基準法は、建築物そのものの基準を定めている「単体規定」と、建物が集まって作られる市街地の環境整備などを目的とする「集団規定」の2つに分類することができます。

細分化し内容を明確にしている

建築基準法は細かい条文により、国民の生命・健康・財産が最低限守られるように保護されています。

たとえば「耐震基準」の制定により、地震に対する建物強度の規定を示したり、「用途地域」の制限により、土地の用途を13種類に区分けし、指定したりしています。

さらに「採光義務」を定めることで、居室に最低限の自然光を取り込むことができるように定めています。そのほかにも、建物の密集地において火事の延焼を防ぐように住宅の火災に対する強度を定めた「防火地域・準防火地域」、避難経路や緊急車両が侵入できるスペースを確保するために定めた「接道義務」などがあります。

また建築基準法の順守のため、政府は検査機関を持っています。政府から委託された民間の検査機関によって、着工前の建築確認や着工後の中間検査、完了検査などが行われます。

用途地域

建築基準法第48条にもとづき、用途を定めた地域。地域の混在を防くことで、住環境・利便性・環境水準などが確保される。

採光義務

建築基準法第28条にもとづき、居室の窓面積を床面積の1/7以上設けることを義務付けた規定。窓がない、または窓面積が足りない場合は居室として扱えない。

接道義務

建築基準法第43条にもとづき、建築物を道路に接することを義務付けた規定。火災時の消火活動など、防災の円滑化を図るために制定された。

建設する上で厳守すべき建築基準法

建設する上で厳守すべき建築基準法

建設する上で厳守すべき建築基準法

建築基準法の主な内容

建築基準法の主な内容

建築基準法の主な内容

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