第45回:【住宅業界の規則・法律・税制】耐震基準の改定と新耐震・快適な住環境を守る建築基準法の用途地域【建築基準法の用途地域・耐震補強・都市計画区域・都市計画区域外・準都市計画区域・市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域・住居系地域・商業系地域・工業系地域】

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大きな地震が発生するたび変化してきた耐震基準【政府は耐震補強に力を入れる】

大きな地震があるたびに耐震基準が見直され、少しずつアップデートをくり返してきました。各住宅メーカーは、耐震基準が変わるたびに基準に合わせて住宅構造の性能をアップさせてきました。

現在の耐震基準

まず現段階の耐震基準はどうなっているのでしょうか。耐震基準は「数百年に一度発生するといわれている住宅の密集する都市で震度6強から震度7程度の地震に対して、倒壊・崩壊しないこと」と定められています。

この目標基準をクリアするために、さまざまな構造計算上の数字基準が設定されています。この基準をクリアできない住宅は、法律上建てることができません。

耐震基準の改定の歴史

1978年宮城県沖地震で大きな被害が発生したあと、1981年に新耐震設計基準が施行されました。この改正は1981年以前の基準を「旧耐震」、以後を「新耐震」と呼ばれるほど大きなものでした。改正前の「旧耐震基準」では震度5程度の地震に耐えればよいとされていました。

しかし、さらに激しい地震を経験したことにより、震度6強から震度7程度の地震に耐えられるべきであるとされ、耐震基準が改定されました。

また2000年には主に木造住宅の耐震性が向上する規定が盛り込まれました。この改正は1995年の阪神淡路大震災の影響で起こりました。地震による大きな被害の経験から、住宅を建てる前の地盤調査の義務化や基礎・金具・耐力壁などさらに細かく基準が設けられるようになったのです。

今後も大きな地震が発生するたびに、耐震に関する研究が進み、技術の進歩とともに耐震基準がアップデートされていくことでしょう。

新耐震とは

1981年の建築基準法改正による新しい耐震構造の基準。1995年に起きた阪神淡路大震災では、全壊した木造の建物のうち93%が新耐震基準前に建てられた建物だった。

耐震補強工事の推奨

耐震基準の改正が行われていない1981年以前に建築された建物は震度6~7の地震で倒壊する可能性が高いのです。そのため国は「旧耐震」である住宅に対し、耐震補強の工事を強く推奨しています。各自治体では工事費の一部を負担する補助金も出しています。生命に関わるため、リフォーム会社も同調し推奨していく必要があるでしょう。

耐震補強

耐震性の向上のため、土台や柱などの主要構造を補強すること。外付けの鉄骨フレーム設置などの構造部分の強化工程であるため、大規模で長期間の工事となる。

主な大地震と耐震基準の歩み

主な大地震と耐震基準の歩み

主な大地震と耐震基準の歩み

耐震基準の変化

耐震基準の変化

耐震基準の変化

快適な住環境を守る建築基準法の用途地域【細分化されている】

新築した住居の周りの環境が変化することによって、施主にとって大きな損害になってしまうことがあるのです。環境変化による損失を防ぐため、建築基準法には「用途地域」という規定があります。

計画区域の分類

国が計画的に街作りを進めるエリアを「都市計画区域」、それ以外の人があまりいない地域を「都市計画区域外」や「準都市計画区域」と分類しています。「都市計画区域」はさらに「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」に分類されます。「市街化区域」は10年以内に、優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域のことです。なお「用途地域」はこの「市街化区域」を12種類に分類した地域のことをいいます。

用途地域とその内容

市街化区域は政府によって、地域の特徴に応じて、12の用途地域に分類されている。

総称 用途地域 内容
住居系地域 第一種低層住居専用地域 低層の住宅専用地域で、店舗兼住宅であれば特定の業種に限り店舗を建設できる
第二種低層住居専用地域 低層の住宅専用地域で、第一種低層住居専用地域で建設できるものに加え、コンビニなど小規模な店舗であれば建設できる
第一種中高層住居専用地域 中高層の住宅専用地域で、2階以下の飲食店や小規模なスーパーマーケットも建設できる
第二種中高層住居専用地域 中高層の住宅専用地域で、第二種低層住居専用地域で建設できるものに加え、中規模の店舗や事務所を建設できる
第一種住居地域 住居環境を守るための地域で、小規模な店舗や事務所に加え、カラオケやパチンコなど一部を除く商業施設が建設できる
第二種住居地域 住居環境を守るための地域で、第一種住居地域で建設できるものに加え、カラオケやパチンコなどの商業施設も建設できる
準住居地域 沿道地域として、自動車関連施設や映画館なども建設できる
商業系地域 近隣商業地域 周辺住民の利便性を図るための地域で、商業施設・事務所に床面積の制限がなく、危険性が低い工場も建設できる
商業系地域 大型の駅周辺などに見られる商業施設が集まる地域で、ほとんど制限がなく建築物を建設できる
工業系地域 準工業地域 環境悪化の危険性が低い工場のための地域で、工場に加え住宅や商業施設も建設できる
工業地域 工場の利便性を図るための地域で、住宅や商業施設は建設できるが、病院や教育施設は建設できない
工業専用地域 工場専用の地域で、住宅や商業施設は建設できない

用途地域の目的

「用途地域」とは、計画的な市街地を形成するために用途に応じて12地域に分けられたエリアのことです。主に「住居系地域」は7種類、「商業系地域」は2種類、「工業系地域」は3種類に区分されます。用途地域は住居エリアが日当たりや騒音、公害などで住みにくい環境にならないように設けられた法律なのです。

また、それぞれの住居地域によっては景観を守るために「低層の建物しか建ててはいけない」「密集している地域では火災に強い住宅性能にしてなくてはいけない」などのルールが定められています。

用途地域別の違い

各用途地域では、おおまかなルールだけでなく、細かい基準が制定されています。たとえば土地に対して建てられる大きさの割合である建ペい率や容積率、高さ制限、斜線制限などが用途地域によって定められています。そのため、住宅メーカーは必ず用途地域を確認してから設計を進めなくてはなりません。

住居系地域

用途地域のうち、住宅の建設を目的とした地域の総称。用途地域ごとに高さ・床面積・敷地などの制限が設けられており、一定の住環境が確保できる。

商業系地域

用途地域のうち、商業施設の建設を目的とした地域の総称。百貨店・商店街・娯楽施設などが多く、賑やかで交通手段も発達している。

工業系地域

用途地域のうち、工業施設の建設を目的とした地域の総称。工場、倉庫、設備販売場、事務所などが集まるほか、分譲地やマンションも建てられている。

都市計画区域における用途地域の分類

都市計画区域における用途地域の分類

都市計画区域における用途地域の分類

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