責任の所在を明らかにした住宅メーカーの一貫施工【一定以上の品質が保たれる】
さまざまな業者や職人が関わり住宅を建築する中で、住宅メーカーや工務店は指揮官役として活躍しています。住宅業界には「一貫施工」という合理的なしくみによって作られた関係が構築されているのです。
一貫施工では住宅メーカーや工務店が責任を持つ
住宅業界における「一貫施工」とは、設計から建材・設備の発注、施工などのすべての工程を、住宅メーカーや工務店など1つの会社が責任を持って請け負うことを指します。
施主から見るとすべての工事責任は住宅メーカーや工務店にあります。そのため、業者・職人は、責任を取る立場にある住宅メーカーの指示に従い、また直接施主・顧客とやり取りすることがなくなります。
一貫施工の基本的なメリット
一貫施工には「手抜き工事が減ること」と「工程管理がスムーズになること」という大きなメリットがあります。
工事や商品の品質の責任は住宅メーカー側にあるため、下請け業者や職人に丸投げして関与しないことはありません。また一定以上の品質が保たれるように業者や職人の施工を管理・指導するため、手抜き工事のリスクが減ります。
さらに一貫施工の場合、設計と現場管理の従業員同士でコミュニケーションを図るようになります。設計図と施工内容との食い違いが少なくなるというメリットもあるのです。
下請け業者や職人にとっても一貫施工はメリットがあります。一貫施工では基本的に住宅メーカーや工務店が顧客との窓口になるため、自分たちの専門作業に専念できます。
また、たとえば建築中にトラブルが発生し、責任の所在が不明確な場合でも、業者間での責任のなすり付け合いが発生することはありません。基本的には住宅メーカー側が指揮官として問題を解決する仕組みになっています。
工程管理
施工工程全体を監督する業務。施工計画の作成や進捗管理、安全性の確認、職人の業務管理などが挙げられる。
下請け業者
顧客と直接契約を結ぶ元請け業者に対し、元請け業者から仕事を引き受けたり、割り振られたりする業者。
住宅メーカーによる一貫施工
一貫施工のメリット
多くの住宅メーカーが施工を外注している【職人への教育や管理が重要】
住宅メーカーは基本的に住宅施工のほとんどを外注しています。これは実は住宅メーカーに限らず工務店も同様です。一部自社で職人を抱える住宅メーカーや工務店もありますが、それも工事の一部に過ぎません。
住宅メーカーが職人を抱えることは不可能
新築住宅の建設工事に携わる主な専門業者として、測量、解体、基礎、大工、屋根、外壁、設備、電気、水道、ガス、内装、左官、外構などが挙げられます。それぞれにまったく異なる技術が必要なため、すべての過程において、業者や職人が異なります。
これらの職人をすべて自社で抱え続けるのはあまりに非効率的で不可能です。一部の住宅メーカーが大工のみ自社で抱えていることをウリにしていることもありますが、基本的には外注するのが当たり前の業界です。
自社で職人を抱えても高いメリットとはいえない
大工を抱えていることをウリにしている住宅メーカーも存在します。たしかに自社の職人であるなら教育しやすく、とくにマナーレベルや自社製品に対する知識や技術力は高くなります。
しかし、仮に大工のみ教育が行き届いても、職人は大工だけではないため、大きなメリットにはなりません。
また、もしも自社で抱えている職人が大きなケガ・病気をしたり、一定の期間だけ施工件数が急激に上がったりしたときに、対応の融通が利かなくなってしまいます。そのため、自社で職人を抱えることで、施工水準が下がることもあるのです。
住宅メーカーや工務店が施工を外注すること自体に良否はありません。住宅メーカー側がいかに日ごろから職人への教育や管理を徹底しているかが重要なのです。
職人たちの管理体制が整っている住宅メーカーでは定期的に技術・マナー研修を行っています。また、外注している職人のマナーや技術の社内共有も行っています。
施工水準
施工の完成度、レベル。施工水準の低下は、施工効率や完成度、顧客満足度の低下につながる。
技術・マナー研修
会社が開設する勉強会や講習会。個人のスキルアップや顧客との信頼関係の構築、会社のイメージアップを目的として行われる。