<<第50回:【住宅業界の動向と今後の課題】欠陥住宅問題と悪質リフォーム業者への対応・健康・介護を考慮した住宅設計【住宅トラブル・施工不良・施工ミス・バリアフリー住宅・介護しやすい住宅設計】
違法建築問題と公共団体のチェック機能【2007年に建築基準法が改正】
たびたびニュースとなる違法建築問題。一向になくならないと感じている人も多いでしょう。建築基準法を守っているのかをチェックする機関は機能しているのでしょうか。詳しく解説します。
違法建築の歴史
違法建築の中でもっとも業界に影響を与えたのが、2005年に発覚した分譲マンションの構造計算書偽装(耐震偽装)問題の通称「姉歯事件」です。一級建築士が作成した構造計算書が改ざんされていたことを検査機関が見抜けず、耐震基準に満たない構造のマンションが建ってしまったのです。この事件により、建築基準法の見直しが行われました。
そのほか、2015年に三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区のマンションが傾き、杭打ち施工業者の旭化成建材による数多のデータ改竄が発覚(2007年建設)。2019年にはレオパレス21が遮音性の基準を満たさない部材や仕様と異なる防火構造の部材を使っていたことで、建築基準法違反のアパートが延べ3000棟以上見つかったという事件もありました(1996~2001年に手がけた物件)。
2007年以降審査が厳しくなる
姉歯事件により2007年に建築基準法の改正が行われ、構造計算書の二重チェックに加え、申請書類に不備があった場合、審査段階での修正を認めず再申請させるなど、手続きがかなり厳しくなりました。また、建物に関するコンプライアンスの意識が高まり、所有者の責任も厳しく問われるようになりました。
近年発覚しているマンション問題も改正前に建設されたものがほとんどで、改正後の違法建築は大幅に減っています。しかし、まだ課題は残っています。とくに戸建てリフォームなど細かい増改築においては申請を出さない業者もあり、行政にチェックされずに放置されてしまっている建物も多数存在しているのです。
二重チェック
2007年の建築基準法の改正により、高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物は、第三の設計事務所に所属する専門家によって構造審査を行うことが義務付けられた。
コンプライアンス
建築基準法の順守のほか、個人情報保護や鍵の交換なども含まれる。また、住宅の販売時や中古物件、賃貸物件を取り扱う際には、宅建士の資格の提示や事故物件などの主旨説明が求められる。
違法建築問題の歴史
発覚時期 | 事件名 | 内容 |
---|---|---|
2005年 | 構造計算書偽装問題(姉歯事件) | 一級建築士が行った構造計算ソフトウェアの計算結果を改ざん・偽装したが、建築確認・検査を実施した行政および民間の指定確認検査機関が見抜けなかった→この事件の影響で2007年より建築基準法の見直しが行われ、手続きが厳しくなる |
2015年 | 横浜マンション傾斜問題 | 三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区のマンションが傾き、杭打ち施工業者の旭化成建材による数多のデータ改竄が発覚 |
2019年 | レオパレス21建築基準法違反問題 | レオパレス21が延べ3000棟以上のアパートで遮音性の基準を満たさない部材を使っていたり、仕様と異なる防火構造の部材を使っていたりするなどの建築基準法違反をしていた |
違法建築建物の推移
3Dプリンター住宅と建設ロボットの介入【住宅建設の低価格化・効率化の実現】
今後、建築・住宅業界における大きな課題をクリアできる技術として、3Dプリンター住宅や建設ロボットが注目されています。これらの技術は現在どこまで進み、また今後どのように発展していくのでしょうか。
3Dプリンターが普及する未来
3Dプリンター技術が進みどんどんと大型化していますが、すでに海外では住宅を建てられるところまで進化しています。3Dプリンターですから、家の形は自由自在で曲線もキレイに描けますし、かつ1日ほどで建てられるためかなりの低価格です。
3Dプリンターはとくに新興国における住宅や、災害や事故によって必要になった仮設住宅を建設するのにとても適しています。3Dプリンター住宅は土や藁などの天然素材から作ることができるため、現地で素材を調達できることも強みになっています。
このように3Dプリンター住宅は夢のような住宅ですが、まだまだ精密性・耐震性などクリアできない課題は多く、日本では導入されていません。しかし、災害大国日本にはメリットが大きいため、すでにゼネコンも興味を示し研究開発を行っている段階になっています。
3Dプリンター
ノルウェーに拠点を構える不動産会社Framlabは、アメリカのニューヨークに「Homed」という3Dプリンターによる住宅を建設した。今後、途上国の住宅不足の解決に寄与するのではないかと考えられている。
建設ロボットの普及
建設・住宅業界で深刻な問題となっている職人不足。これを解決できるのは建設ロボットの普及です。
建設ロボットは作業の効率化だけでなく、危険な作業現場の安全性を確保するのにも貢献してくれます。そのため、1980年代ごろからとくにトンネル工事など土木作業での研究開発が進んでいます。それにゼネコンでは大型ビルの建設にもロボットが使われるようになっています。
しかし、住宅業界、とくに戸建てでは、ほとんど普及が進んでいません。ただ技術が進歩し日本の職人不足を補ってくれる未来は必ず訪れるでしょう。
建設ロボット
国土交通省は2025年を目途に「建設現場の生産性20%向上」という目標を掲げている。大手ゼネコンの鹿島建設や清水建設が、建設ロボットの正式な現場導入に向けて事業を進めている。
3Dプリンターの導入
建設ロボットの普及
>>第52回:【住宅業界の動向と今後の課題】未来の住宅スマートホームの展望・【スマートホーム・スマートスピーカー・スマートリモコン・ZEH基準】