第49回:【住宅業界の規則・法律・税制】国土交通省の告示による安心R住宅制度・住宅ローン減税による促進【ホームインスペクション・現況写真情報・住宅借入金等特別控除・適用条件・期間・控除】

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国土交通省の告示による安心R住宅制度【買い手と売り手どちらにもメリットが大きい】

中古住宅の売買は少しずつ伸びているものの、欠陥住宅などのマイナスイメージもあり、不安を感じることも多いのが現状です。その問題を解決するため、近年「安心R住宅」制度が始まりました。

安心R住宅の試み

中古住宅の流通促進に向けて、「住みたい」「買いたい」中古住宅を選択できる環境の整備を目的に、2017年に国土交通省の告示により「安心R住宅」制度が創設されました。

「R」はReuse (リユース、再利用)、Reform (リフォーム、改装)、Renovation(リノベーション、改修)の3つの意味を持っています。特定の条件を満たした住宅は「安心R」住宅専用のロゴを使用できます。

安心R住宅の条件

まず、建物状況調査といわれるホームインスペクションによって基礎的な構造上の性能が担保されます。耐震性があり、雨漏りなどの不具合がない住宅であることが、1つの条件です。

次にリフォーム工事が実施されているかの有無や、実施されていない場合はプランが付いていることが条件となります。また、現況写真情報があることも含みます。

さらに、今まで実施した点検や修繕の内容や、どんな保険・保証が付くのか、という情報が十分に開示されている必要があります。たとえば「検査基準の適合状況」「修繕工事の実施状況」「建設時の状況」「書類の保存状況」などが挙げられます。

そのほか、これまでに解説した瑕疵担保保険に加入できるようにしておくことも、認定に必要な条件の1つです。安心R住宅に認定されると、専門のポータルサイトで閲覧できるようになります。

また、これから解説する「住宅ローン減税」が築20年を超えていても適用されるようになります。

ホームインスペクション

建築士や住宅設計士が客観的に調査・検証し、問題点を検出すること。主に建物構造や設備配管の耐性、安全性を目視で検査する。

現況写真情報

建物・設備の状態や付近の情報を記録として残した写真。住宅を販売する際に顧客と共有する。

安心R住宅が目指すもの

安心R住宅が目指すもの

安心R住宅が目指すもの

安心R住宅の条件

安心R住宅の条件

安心R住宅の条件

住宅ローン減税による促進【経済に大きな影響を与える】

住宅の購入やリフォーム・増改築を援助する支援策として最大額となる住宅ローン減税。消費税増税時に期間延長があったことで知られています。ここではその制度の内容や今後の動向について解説していきます。

住宅ローン減税(控除)

住宅ローン減税の正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。住宅ローンを利用して、戸建や中古物件などを購入またはリフォーム、増改築した場合に、一定の期間、住宅ローン残高の一部を、所得税と住民税から控除する制度のことをいいます。

年末の住宅ローン残高の1%が、最大で400万円まで約10年間控除されることになります。たとえば3000万円の住宅ローン残高であれば、適用条件に当てはまる場合、1年で約30万円税金が安くなるのです。

なお、この制度は2022年12月31日までに住宅へ入居、という適用期間があるので注意が必要です。

所得税とは

国税のうちの1つで、個人の年間所得に対して税務署が課す税金。

住民税とは

地方税のうちの1つで、個人の居住に対して都道府県や市区町村が課す税金。

適用条件とは

住宅ローン減税(控除)を適用させるにはいくつか条件がある。転居時期、所得金額、床面積、借入金の有無、築年数などが条件として挙げられる。

消費税増税時に期間延長があった

消費税が増税されたときに消費の冷え込みがありましたが、住宅市場においても他市場と同様のことが起こっていました。

住宅市場の落ち込みは、関連業種含めて経済に大きな影響があるため、政府は増税後に住宅市場が落ち込まないように対策を設けました。当時の政策には住宅ローン控除期間が10年間から13年間への3年の延長も含まれていました。

この延長は2020年12月31日で終了しましたが、消費税増税時に設けられた住宅ローン控除の政策が、期間終了後の2021年現在も住宅購入やリフォーム施工の動きの後押しをしていることは間違いありません。

現在の住宅ローン減税は2022年12月31日までですが、新型コロナウイルスの影響により、経済が不安定な状況になっており、減税制度は延長される可能性が高いといえます。

住宅ローン減税と景気状況

住宅ローン減税と景気状況

住宅ローン減税と景気状況

住宅ローン減税による促進

住宅ローン減税による促進

住宅ローン減税による促進

前代未聞の特殊な地震と耐震等級

耐震基準をクリアしたから倒壊しないわけではない

現在の耐震等級は「数百年に一度発生する地震に対して、倒壊・崩壊しないこと」という基準だと説明しました。しかし、これはあくまでも「1回耐えることができる」という基準を示しているものです。

2016年4月14日21時26分に発生した熊本地震では、震度7 (マグニチュード6.5)が発生したあと、2016年4月16日1時25分に震度7(マグニチュード7.3)がもう一度発生しました。つまり、28時間の間に、2度も震度7の地震が発生したのです。

熊本地震による家屋倒壊被害は、3万棟以上でした。被災者の約7割が家屋倒壊被害を受けました。「1回目の震度7の揺れによってダメージを受けた建物が2回目の揺れで倒壊した」ことで、家屋倒壊被害の件数が、同規模の地震の被害と比べ、大きくなったのです。このことから耐震基準をクリアしたからといって必ずしも安全ではないということがわかります。

真に安心できる要素は耐震等級だけで決まらない

近年では「耐震等級は最高等級3を取得」と告知している住宅メーカーが多くあります。耐震等級は1~3段階まであり、耐震等級1に対し1.25倍の地震に耐えることができる場合は「耐震等級2」、耐震等級1の1.5倍の地震に耐えることができる場合は「耐震等級3」を取得できます。

しかし、それは住宅メーカーの構造性能というより、間取りにおける壁の量などによって調整していることが多いのです。耐震計算は、屋根材の重さなどによって数字が変わるため、安全を保証する数字ではないのです。

住宅メーカーで働くならば、このようなポイントを把握し、顧客に丁寧に説明する必要があります。とくに耐震性については生命に関わるため、誤解のないように伝達することが大切です。

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