<<第39回:【住宅業界】行政や施主による住宅の検査と主なチェック項目【建ぺい率・容積率・検査済証・擁壁・完了検査・施主検査・建築確認】
海外から遅れている日本住宅の大きな問題点【室内が寒く、建物の寿命が短い】
ここ10年で日本住宅は急速に進化してきましたが、それでも世界から見ると遅れているといわれています。その理由は2つ、「室内が寒い」と「建物の寿命が短い」です。
日本の住宅の歴史と特徴
日本の夏は高温多湿です。暑さに湿度が加わり、不快指数はかなり高くなります。だからこそ夏の暑さを凌ぐため、昔から日本家屋は風通しを最優先で作られてきました。昔ながらの日本家屋やお寺をイメージするとわかりやすいでしょう。
そして、戦後の日本はストーブやエアコンなどの家電が進化・普及し、冬は家電で部屋を暖める文化となったのです。しかし、住宅自体はあまり進化せず、断熱・気密性は世界的に低い状態になったのです。トイレの便座を温める機能は日本では当たり前ですが、海外ではほぼ普及していません。海外では家全体を温めるセントラルヒーティングの考え方が当たり前で、そもそもトイレが寒いという感覚があまりないのです。
高温多温とは
温度が高く、湿気が多い状態のこと。日本の木造建築は、湿度を調整する性質を持つ木材や井草を用いたり、風通しをよくする障子や襖を使用したりして快適な暮らし作りをしている。
セントラルヒーティングとは
地下室や屋上などに熱源装置を設置し、パイプ管を通して各部屋へ暖を送る方法。日本では、建物全体を温めることよりも暖房やストーブなどで局所的に暖を取るスタイルが主流となっている。
日本の住宅が「世界の住宅より遅れた」理由
戦後、日本の住宅も少しずつ海外から技術を盗み、断熱材を取り入れるようになりました。しかし、日本は湿気が多い国です。風通しを重視した構造の住宅に中途半端に断熱材を取り込んでしまったせいで、今度は湿気が壁内に溜まり築30年も経てば断熱材や柱がカビたり腐ったりしてしまいました。これが日本住宅の寿命が短くなってしまう大きな要因の1つです。
ここ10年で日本住宅の断熱・気密性は大きく上昇し、壁内はカビにくくなってきました。しかし、いまだに世界最大のヒートショック大国となっています。あまリニュースになりませんが、毎年浴室でヒートショックによる死者が交通事故死の約4~5倍もいるのです。この日本住宅の大きな問題を住宅関係者がひとりひとり自覚する必要があるでしょう。
ヒートショックとは
住宅内での急激な温度変化により、血圧や脈拍に変動が起こり身体へ悪影響を及ぼすこと。
高温多湿に合った日本の伝統的な建物
浴槽内で起きた死亡事故件数と平均気温
住宅メーカーの差別化戦略【各社で基本性能が向上する】
住宅メーカーはほかの業界と比較すると競争が激しく、戸建て販売数や売上のトップ10が少しずつ入れかわっています。そのため、各社生き残りをかけて他社との差別化を図りながら成長を続けています。
技術の向上によって差別化は困難に
10年以上前の住宅メーカーであれば差別化が比較的容易にできました。たとえば一条工務店のように断熱・気密性を大きく向上させたり、旭化成ホームズのように耐震性・耐火性・メンテナンス性などを兼ね備えた外壁材(ヘーベル)を主軸に営業展開したり、ミサワホームのように「蔵」という収納空間を設けたりなど、メーカーのカラーをしっかりと押し出してウリとなる商品を開発すれば売上・販売棟数が一気に上昇しました。
しかし、近年では基本となる性能、「耐震性」「断熱・気密性」「耐火性」「劣化性能」が各住宅メーカーともに一気に向上してきました。そのため、性能のよし悪しだけでは差別化が困難になってきています。
また、優れた商品を開発しても、必ず類似商品やより優れた商品が別メーカーから販売されることになり、人気は一時的なものとなるのです。
蔵
階間や踊り場下の空間などを活用した収納のこと。十分な収納スペースが設けられるほか、バルコニーが広くなる、音が響きにくくなるなどの特徴がある。
ポジショニングと強みのかけ算
差別化が難しくなってきたため、近年の住宅メーカーではポジショニングと強みのかけ算が重要になってきています。各社、販売する住宅商品を何種類かに分けてシリーズ化し、それぞれの商品の顧客ターゲット(年収層・年齢層など)を明確化、、自社のポジションをしっかりと定めてきています。
強みのかけ算については、たとえば「高断熱・高気密」をウリにしているメーカーは「全館床暖房」や「全館空調」という商品をセットにすることで、強みと強みをかけ合わせ、より強固な差別化を図っているのです。
ポジショニング
自社のサービスや取り組みをどの層に向けて展開するのか、価格帯やデザイン性を分析して定めること。