<<第1回:【住宅業界】住宅は10年で急速な進化を遂げている【住宅メーカーの超省エネ時代】
住宅業界の最大の課題は職人不足にある【若者の職人離れを止める】
快適な居住空間を作り出している住宅業界ですが、職人を目指す若者が減少していることにより、大きな問題に直面しています。建設業従事者数の推移などを通じて、現状を見ていきましょう。
深刻化する職人不足
あまリメディアで取り上げられていませんが、住宅業界でもっとも巨大で深刻な問題が「職人不足」です。国土交通省も大きな課題ととらえ「待遇・賃金・労務環境」改善対策を試みています。しかし、明るい展望はなかなか見えていません。
国土交通省の調査によると、2015年の段階で建設業に勤めている人の約3割が55歳以上でした。また、2020年では3割が60歳以上となっています。2025年前後からは3割以上の人が、一気に引退していくことになります。
さらに、2015年の段階で29歳以下が約1割という現状もあります。バブルが崩壊したあとの1997年を境に若者の職人離れが始まりました。バブル崩壊も要因の1つではありますが、3Kというイメージから職人になろうとする若者が減っていることも事実でしょう。
待選・賃金・労務環境
アーキブックの「現場職人の年収」によると、2019年時点で30歳サラリーマンの平均年収が545万円なのに対し、現場職人は464万円という結果となっている。
3K
「きつい・汚い・危険」の頭文字。土木・建築系やエンジニア、介護や清掃などの現業系・技能系の業界で多用される。
職人不足による巨大な影響
職人が不足すると、工事の質が下がるのはもちろんですが、少しでもよい職人を確保するために、賃金を上げる必要がでてきます。もちろん、職人だけでなく、それを管理する監督者の負担も大きくなるため同様に賃金が上がります。
また職人が確保できないと少数で工事を行うため、工期が長引き、職人たちの賃金がさらに上がります。加えて回転率が下がるため、建設会社の利益が下がるだけでなく、設備メーカーや建材メーカーも影響を受けるのです。
建設会社が利益を確保できないと開発費用が減り、新商品が登場せず、業界は大きな悪循環に突入することになります。
建設業就業者の高齢化の進行
職人不足による悪循環
扱う商品によって業績が大きく変わる【勝ち組と負け組に分かれる】
住宅業界は新築業界やリフォーム市場、中古販売市場に分けることができます。少子高齢化や住宅構造の向上によって、顧客ニーズが変化し、市場ごとの業績の差が大きくなっています。
住宅業界内の2極化
少子化・人口減少の影響を真っ先に受けているのは新築市場です。注文住宅の住宅メーカーや工務店、マンション建設のゼネコンなどの販売棟数や市場規模は、ここ10年で下降の一途を辿っています。2020年のコロナ禍の影響で大きなダメージを受け、M&Aを行う大手住宅メーカーもあります。住宅メーカーは生き残るために必死で事業を行っているのです。
反面、リフォーム市場や中古販売市場はここ10年においても安定した業績推移となっています。1980年代前後に起こったマイホームブームで新築した家が、ちょうど築40年ほどとなるため、需要が高まっています。今後、在宅ワークや余暇の増加といった要因で、リフォーム市場は当分の間は安定が見込めるでしょう。
また、ここ30年で住宅構造が進化し構造部の寿命が伸びたことも、市場業績の伸びに貢献しています。また土地やマンション価格の高騰により、中古戸建やマンションを低価格で購入し、リノベーションする方法に人気がでてきたことなども理由に挙げられます。
新築市場
建設や販売業務において、新築住宅を扱う市場。新築住宅の販売数や着工数の低下が予想されている中、都市部を中心に賃貸志向が高まっていることも新築市場低迷の要因となっている。
リフォーム市場
増改築、設備修繕、家電・家具の修理や模様替えなどを扱う市場。コロナ禍による新しいライフスタイルへの需要に応じて、衛生環境改善やテレワークに適した住環境作りが求められている。
中古販売市場
中古の一戸建てやマンション物件を扱う市場。新築需要の低下に加え、リノベーションやDIYの需要増も中古販売市場が拡大する要因となっている。
住宅、土地価格の高騰
住宅や土地の価格はここ10年で上昇を続けています。その要因は住宅ローンの低金利や東京オリンピック開催などがあります。これが続けば、ますます中古やリフォーム市場の業績は上昇するでしょう。しかし、コロナの影響で郊外需要が高まり都市部のマンション価格が下落する現象も起きています。そのため、東京オリンピックが終わったあと、業績がどのように推移するかを予想することは非常に困難です。
新設住宅着工戸数とリフォーム市場規模の推移
東京23区住宅地の平均㎡単価
>>第3回:【住宅業界】住宅業界はすべての産業に影響を及ぼす・少子高齢化による空き家問題【住宅ローン減税(控除)・すまい給付金・空家等対策特別措置法】