価格と耐久性、安全性が重要なクロスの主なメーカー【2強体制が続いている】
新築工事における最終の仕上げはクロス貼りです。近年のクロスはホルムアルデヒド量の規制によって健康被害も減少し、防火性も向上しています。ここではクロスの種類や製造するメーカーについて解説します。
クロスの種類と特徴
クロスの種類でもっとも普及しているのはビニールクロスです。他のどのクロスと比較しても低価格で耐久性があります。また、カラー・デザインのラインナップや抗菌性、防カビ性、防汚性など機能が豊富で、かつ手入れがしやすい特徴があります。施工会社から見ても施工しやすいというメリットがあり、新築のほとんどがビニールクロスでの施工となっています。
その他に、紙の素材でできている紙クロスがあります。海外からの輸入クロスが多く、日本のクロスメーカーにはないインパクトのあるデザインや独特な色合いを持つものが多くあります。
織物クロスは絹、麻など織物で作られるクロスです。ビニールクロスと比較すると、高級感や重厚感があります。
紙クロスや織物クロスの施工はビニールクロスと比較すると、非常に神経を使う施工になるため、施工業者は嫌がる傾向になる上、工事費が割増しになります。
手入れ
ビニールクロスの壁面はスポンジやタオルで水拭きすることで、清潔に保つことができる。
輸入クロス
イギリスやドイツなどヨーロッパの輸入クロスが人気。本場のデザインクロスを選択できる一方で、取り寄せや施工に費用がかかり、手入れがしにくいなどのデメリットもある。
主なクロスメーカーと特徴
クロスメーカーはサンゲツ、リリカラの2強体制となっています。次いでシンコールインテリアが続き、そのほかに東リ、ルノン、トキワなどのメーカーがあります。
サンゲツはシェアの半分を占めており業界最大手です。使いやすいシンプルなデザインからアクセントに使えるインパクトのあるクロスまでラインナップを豊富に取り揃えています。また、抗菌性、防カビ性などのさまざまな機能も充実させています。
リリカラはサンゲツとは差別化を図り、デザイン・装飾性の部分に強みを出しているメーカーです。
クロスの種類と特徴
主なクロスメーカーと特徴
カーテンや畳などその他のインテリアの主なメーカー【建材メーカーが複合的に製造している】
住宅を構成するインテリアはカーテンや畳、巾木・廻り緑という造作部材などいろいろなものがあります。これらは、これまでに取り上げてきた建材メーカーが複合的に製造していることが多いのです。
カーテンを作っているメーカー
カーテンはサンゲツ、リリカラ、シンコールインテリア、東リなどクロスを製造しているメーカーが製造していることが多いです。このようなメーカーは、ほかにも塩ビの床材であるクッションフロアやカーペット、ソフト巾木などのインテリアも合わせて製造しています。
ほかには、カーテン生地の質やオリジナリティにこだわったアスワン、織物の老舗である川島織物セルコンなどのメーカーがあります。
塩ビ
ポリ塩化ビニルのこと。耐久性や耐火性が高く、断熱性に優れている。住宅のクッションフロアや商業施設などのタイルカーペットにも用いられている。
内装メーカーが作る特殊な畳
大手内装メーカーが製造している畳は、畳屋の職人が編んで作る畳とは大きく異なります。まず、建具や床材で紹介した大建工業は、い草を使用していない和紙で作られた畳を販売しています。和紙のため、カラーバリエーションがあり、色褪せしない特徴があります。
また、積水成型工業が作った「セキスイ畳」は高度な樹脂加工技術によって、大建の畳と同様に色褪せず、水や汚れにも強い特徴を持っています。
色褪せ
い草で作られている畳は、紫外線とい草に含まれる葉緑素が反応を起こし、色が褪せることがある。一度色褪せた畳は、もとの色に戻ることはない。
巾木・廻り縁などの造作部材
住宅のインテリアの中には、巾木(幅木)材や廻り緑、窓枠(室内側)など、わき役でありながら重要な役割を担っている造作部材があります。これらの造作部材は、建具や床材なども作っているパナソニック、大建工業、永大産業などが製造しています。
カーテンを作っているメーカー
内装メーカーが作る特殊な畳
巾木・廻り縁などの造作部材
競争が激化するリフォーム業界
少子化や人口減少に伴う住宅業界の業績の変化
設備・建材メーカー全体の業績は近年、右肩上がりに伸びてきています。その要因は主に3つあります。
1つ目が東日本大震災や熊本地震などのさまざまな災害から復興するために需要が高まっていることが考えられます。2つ目は2008年頃に発生したリーマンショックの不況から少しずつ回復したことや、日本のオリンピック特需などで景気が上昇したことが挙げられます。3つ目は消費税8%から10%への増税前の駆け込み需要が発生したことです。
しかし、今後コロナの影響などもあり厳しい状況になる可能性が高いです。もちろんリフォーム業界は今後も堅調に推移するものの、少子化や人口減少が進めば、住宅業界全体の市場規模が落ち込んでいきます。そのため、設備・建材メーカーの売上や利益も同様に下がっていく可能性が高いと考えられます。
今後ある程度リフォーム業界が堅調に推移すると考えると、住宅メーカーや工務店などがリフォーム業界への、参入をさらに強める可能性があります。
業界にチャンスを見出し他業界からの参入が増える
また、他業界からもリフォーム業界に関わる設備・建材メーカーにチャンスを見出し、新たに参入してくることも想定されます。実際に近年落ち込みつつある家電量販店やホームセンターは住設機器事業、リフォーム事業への参入を始めています。
競争が激化すれば、新しい発想や技術が生まれるというプラスの面がありますが、価格破壊が起こることもあります。近年では設備メーカーが卸業者を買収し、直接販売することが増えてきました。このような事例がある以上、さらなる価格競争が起きるのは止められません。2011年にINAXやトステムなどの6社が統合してLIXILとなり巨大な企業となったように、今後も業務提携やM&Aなどが頻繁に行われ、住宅業界で生き残るための準備が進んでいくのです。
>>第32回:【住宅業界】責任の所在を明らかにした住宅メーカーの一貫施工・多くの住宅メーカーが施工を外注している【一貫施工・工程管理・下請け業者・施工水準・技術・マナー研修】