第20回【住宅業界】低コスト化を目指す資材調達部門・図面や仕様書から材料の数量や原価を算出する積算部門【建築CAD・点検口・耐震基準・構造図面・見積書・資材調達・環境問題・仕入れコスト・フランチャイズ・スケールメリット】

<<第19回:【住宅業界】研究開発を繰り返す商品開発部門(自社開発でコストを下げる)建築士が所属する設計部門【耐震・中間マージン・間取り・家事動線・衛生動線・耐震設計】

低コスト化を目指す資材調達部門【ルールを設定し環境問題にも配慮】

住宅メーカーにとっていかに資材を安く仕入れ、原価を抑えるかは死活問題です。同時に、住宅メーカーは元請けの大きな組織として資材を調達する上で守らなくてはいけないルールがあるのです。

資材調達部門の仕事内容

資材調達部門は、住宅を建てる上での建材・設備などを仕入れる役割を持っています。商品開発部門と連携しつつ、自社の商品基準(性能や安全性)をクリアできるような資材を世界規模で探したり、価格交渉をしたりします。また、仕入れている建材や設備が一定以上の品質を保っているのかもチェックしています。

住宅を建てるにはどうしても大量の木材が必要になります。規模の大きい住宅メーカーが安いという理由だけで1つの場所から大量に木材を発注すれば、環境問題に発展するでしょう。そうならないよう、また信頼を得られるように大手の住宅メーカーは自ら資材調達におけるガイドラインを設定し告知しています。たとえば、三井ホームグループの場合、「木材・木材製品の合法性の確認」「持続性のある森林資源の調達」「貴重樹種の保護」「サプライチェーンの管理、推進」を掲げています。

また、維持すべきモラルとして、仕入れ先を競合させる競争落札を過度にしないようにしたり、癒着が起きないように公正・公平を宣言したりしている住宅メーカーもあります。

環境問題

特定地のみ森林伐採を行った結果に引き起こる問題。地球温暖化や砂漠化、生物の絶滅などが起こる。

仕入れコストを抑えるための工夫

住宅メーカーは仕入れコストを抑えるためにさまざまな工夫を行っています。たとえばキッチンを仕入れるメーカーや商品を絞ることで、顧客のキッチンを選べる選択肢は減るものの、キッチン1つ当たりの仕入れコストを抑えることができるため、提供価格も安くできるわけです。そのほか、フランチャイズをどんどん展開させ、スケールメリットを活かして大量発注し、仕入れコストを抑える方法も行っています。

資材調達部門の仕事内容

資材調達部門の仕事内容

資材調達部門の仕事内容

資材調達の留意点

資材調達の留意点

資材調達の留意点

図面や仕様書から材料の数量や原価を算出する積算部門【住宅建設にかかる費用を計算する】

図面や仕様書から原価を算出する積算は家作りにおいて非常に重要です。この計算が狂ってしまえば適切な利益を確保できないだけでなく、住宅の設計図が間違った状態で工事が進んでしまう危険性もあるのです。

積算部門の仕事とは

住宅メーカーの積算部門では、設計士などが作った図面や仕様書にもとづき、材料費や工事にかかる人件費などの原価を算出する業務を中心に行っています。

また、それだけではなく建築CADソフトを活用しつつ1/50スケールの細かい図面を起こしていく業務も行っていきます。

たとえば建築CADのソフトを使って、どこにどれだけ柱などの建材を使用して耐震基準をクリアすればよいのか、点検口をどこに設置すべきかなどを検討します。そして構造の留意点を加味したうえで、1/50図面に落とし込んでいくことが積算部門の仕事の1つとなっています。

積算部門では、複雑な構造図面をもとに、どれだけの量の建材や設備が必要になるのかを算出し、見積書や発注書に落とし込んでいきます。

そのため、幅広い建築知識・商品知識が必要になるのです。

建築CAD

建物を設計するための専用ソフトのこと。近年は3Dモデルをベースに設計・施工・維持管理ができるソフトウェアも導入されている。

点検口

住宅内の換気扇や電気配線、水道管などの機械や設備配管の点検に必要な入口。

昔と今の積算・見積りの流れの違い

昔は職人自身が、木材がどれだけ必要か、釘が何本必要なのかなど、すべての積算をしてからそこに利益を上乗せして見積りを作っていました。そのため顧客の要望を聞いてから見積りを提示するまでは非常に時間がかかっていました。

しかし現在は、住宅メーカーが営業部門、設計部門、積算部門にそれぞれ分かれ、合理的に業務を進めるようになりました。営業部門が住宅商品をパッケージ化することで、誰でも簡単に見積りを作れるようにし、積算部門は契約した顧客の図面のみ積算を行うようになりました。

積算部門の業務内容

積算部門の業務内容

積算部門の業務内容

積算業務の昔と今

積算業務の昔と今

積算業務の昔と今

>>第21回:【住宅業界】もっとも多くの人員が配置され顧客のサポートを行う営業部門・住宅品質の鍵を握るアフター部門【住宅展示場・ポスティング・見積書・プラン作成・住宅ローン事前審査・敷地調査・リペア職人・コールセンター・クレーム】

TOP