<<第16回:【住宅業界】住宅を構成する部材・パーツは多種多様・建材設備の値段【建具・サッシ・タイル・光触媒機能・マグネット商品】
総コストに占める施工費・管理費の割合
住宅メーカー・工務店などにおけるコストは、材料費、施工費、管理費の3つです。それぞれ、住宅の建て方やメーカーによっても異なりますが、管理費をコントロールすることが業界の課題となっています。
施工費の割合
住宅販売の粗利益は、販売価格の25~35%ほどです。たとえば2000万円の住宅なら、約600万円が粗利益、残りの1400万円が「材料費+施工費」となります。施工費は基本的に「職人の日当(約2万2000円)×工事の日数」で考えます。たとえば、工期4カ月の注文住宅ならば、約90日、1日2人ほどで工事が進むので「2万2000円×90日×2名=396万円」となります。
販売価格2000万円の注文住宅の場合、約20%が施工費、約50%が材料費です。どの住宅メーカー・工務店においても、施工費はそれほど大きな変動はありません。しかし、使用する建材・設備によって材料費が大きく変動するため、メーカーによって費用の割合は変わってしまうのです。
管理費の割合
管理費は、建てる住宅に直接関わる材料費や施工費とは別に発生する費用のことです。たとえば、営業・設計・現場監督などの人件費、広告宣伝費、モデルハウスや事務所の運営費・家貨、工場設備などの減価償却費などがこれに当たります。
管理費は会社の損益計算では、「粗利益一管理費=純利益」となります。住宅メーカーや工務店の純利益は売上の5~10%なので、逆算すると売上に対して管理費は20~25%という計算になります。
現在の住宅メーカーは競合他社と比較され、不景気や人口減少の影響もあり、以前のようにしっかり粗利益を取ることができなくなっています。そのため、この管理費をしっかりとコントロールすることも業界の課題といえるのです。
減価償却費
企業会計において、建物の設備や機械装置などの、時間の経過によりその価値が減少する資産を計上する際に使用される勘定科目のこと。減価償却費は、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して経費を計上する。
純利益
売上から、製造や販売などにかかった費用のすべてを差し引いて求めた額。企業の純粋な利益のことで、その企業の収益力を示す指針となる。
総コストにおける割合
住宅メーカーや工務店のコストの計算
住宅価格に関する2つの真実
コスパのよし悪しは思い込みが多い
高価格帯の大手住宅メーカーなどで、たとえば「弊社の屋根・外壁材は将来のメンテナンスが不要だから初期投資が多くてもトータルではお得になる」という営業トークがあります。これは屋根・外壁材の部分をピックアップすれば確かに正確です。しかし、大手住宅メーカーの場合、さまざまな建材・設備が高額なものになる傾向にあり、それにともないメンテナンス費用も増加する可能性が高くなります。それに、大手住宅メーカーで建てると、10年後、20年後にも同じ住宅メーカーにメンテナンスを依頼することなってしまいます。つまり、トータルでお得になることは考えにくいのです。
しかし逆に、大手住宅メーカーは規模が大きい分、大量に建材・設備を仕入れることができるので「仕入れコストが下がりコスパがよくなる」という側面もあります。広告宣伝をするからといってコスパが悪くなるイメージも、実は一部分のみをとらえただけの思い込みの可能性があります。住宅を購入する際、コスパを重視する顧客も多いです。しかしその中身はとても複雑で、比較することは難しいというのが現実なのです。
住宅の値下げは人を見て判断される?
とくに注文住宅やリフォーム会社の場合、契約後の顧客との付き合いが長く、また深くなります。打ち合わせも含めて何十回と顔を合わせるからです。また、住宅メーカーにとっては、契約した顧客がほかの顧客を紹介してくれるかも重要です。
そのため、実は住宅メーカーやリフォーム会社側も顧客を選ぶ側面を持っています。それが顕著に反映されるのは、やはり値下げです。文句や嫌みばかりいう人、度を越えた値引き交渉をしてくる人、異常に神経質な人など、とにかくトラブルが起きそうな人を避けたがるので、そういう顧客には多めの金額を伝える、あるいは値下げをしない形で見積りを提示するのです。